咳喘息の治療は、症状が改善した後も、気道の炎症をしっかりと抑え、再発を防ぐために、ある程度の期間、継続して行う必要があります。治療期間は、個々の症状の重症度、治療への反応、アレルゲンの関与の度合いなどによって異なりますが、一般的には数ヶ月から1年以上、場合によってはさらに長期にわたることもあります。最も重要な治療薬である吸入ステロイド薬は、気道の炎症を根本から改善する薬ですが、その効果が現れるまでには時間がかかり、また、自己判断で中断すると気道の炎症が再燃し、咳が再発する可能性が高まります。医師は、症状や呼吸機能検査の結果などを参考にしながら、徐々に薬の量を減らしていく(ステップダウン)ことを目指しますが、焦らずに根気強く治療を続けることが大切です。では、咳喘息の再発を予防するためには、治療以外にどのようなことができるのでしょうか。まず、最も重要なのは「誘因の回避」です。咳喘息の症状を引き起こしたり悪化させたりする可能性のある要因を、日常生活からできるだけ取り除く努力が必要です。具体的には、ダニやハウスダスト、花粉、ペットの毛といったアレルゲンの除去(こまめな掃除、寝具の洗濯、空気清浄機の使用など)、タバコの煙(受動喫煙を含む)の回避、香水や芳香剤などの強い香りのするものの使用を控える、といったことが挙げられます。また、風邪やインフルエンザなどの「気道感染症」は、咳喘息の大きな増悪因子となるため、普段から手洗いやうがいを励行し、人混みを避ける、予防接種を受けるなどして、感染予防に努めることが重要です。急激な「気温の変化」や「乾燥した冷たい空気」も咳を誘発しやすいため、冬場の外出時にはマスクを着用したり、室内の加湿を心がけたりするのも効果的です。「ストレス」や「過労」も、自律神経のバランスを乱し、気道の過敏性を高める可能性があるため、十分な睡眠と休息を取り、リラックスできる時間を持つようにしましょう。適度な運動は、体力向上やストレス解消に役立ちますが、運動誘発性の咳が出やすい場合は、事前に医師に相談し、運動前の吸入薬の使用などを検討する必要があります。そして、何よりも大切なのは、「医師の指示通りに治療を継続する」ことです。症状が良くなったと感じても、自己判断で薬をやめたり量を減らしたりせず、定期的に通院し、医師の指導のもとで治療を進めていくことが大切です。
咳喘息の治療期間と再発予防のためにできること