夏場を中心に、子どもたちの間で流行しやすい感染症に「手足口病」と「ヘルパンギーナ」があります。どちらもエンテロウイルス属のウイルス（コクサッキーウイルスやエンテロウイルス71型など）によって引き起こされ、発熱とともに特徴的な発疹や水疱が現れます。まず、手足口病は、その名の通り、手のひら、足の裏、そして口の中に、米粒大から小豆大くらいの水疱性の発疹ができるのが特徴です。発熱は、必ずしも見られるわけではありませんが、出る場合は三十七度台の微熱から、時には三十八度以上の熱が出ることもあります。口の中の水疱は、舌や頬の粘膜、歯茎、唇の内側などにでき、破れると潰瘍（口内炎）になって痛みを伴うため、食事や水分摂取が困難になることがあります。手足の発疹は、かゆみや痛みを伴うこともあれば、伴わないこともあります。また、お尻や膝、肘など、手足口以外の部位にも発疹が広がることもあります。通常、発疹は数日から一週間程度で自然に消えていきますが、稀に治癒後に爪が剥がれる（爪甲脱落症）ことがあります。次に、ヘルパンギーナは、突然の高熱（三十八度から四十度程度のことが多い）と、喉の奥（主に口蓋垂の周辺や扁桃腺のあたり）にできる小さな赤い水疱や、それが破れた後の浅い潰瘍（口内炎）が特徴的な症状です。この喉の水疱や潰瘍は非常に痛みが強く、食事や水分摂取が困難になるだけでなく、よだれが多くなったり、不機嫌になったりすることがあります。手足への発疹は通常見られません。これらの病気は、主に飛沫感染や接触感染、糞口感染によって感染が広がります。特効薬（抗ウイルス薬）はなく、治療は基本的に、症状を和らげるための対症療法（解熱鎮痛剤やうがい薬など）と、安静、水分補給が中心となります。特に、口の中の痛みが強い場合は、脱水症状に注意が必要です。喉越しの良い、刺激の少ない食事を心がけ、こまめに水分を与えるようにしましょう。