お尻から足にかけてのつらい痛みやしびれ、坐骨神経痛。いざ医療機関を受診しようと思った時、整形外科とペインクリニック、どちらが良いのか迷うことがあるかもしれません。それぞれの診療科の役割と特徴を理解し、自分の症状や目的に合った受診先を選ぶことが大切です。まず、整形外科は、骨、関節、筋肉、靭帯、腱、そして末梢神経といった運動器系の専門家です。坐骨神経痛の原因の多くは、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、変形性腰椎症、梨状筋症候群といった、腰椎(腰の骨)やその周囲の組織の構造的な異常によって、坐骨神経が圧迫されたり刺激されたりすることで起こります。整形外科では、レントゲン検査やMRI検査、CT検査といった画像検査や、神経学的診察、誘発テストなどを用いて、これらの原因を特定し、診断を下します。治療法としては、薬物療法(消炎鎮痛剤、筋弛緩薬、神経障害性疼痛治療薬など)、注射療法(トリガーポイント注射や硬膜外ブロックなど)、装具療法、リハビリテーション(運動療法や物理療法)、そして場合によっては手術療法といった幅広い選択肢があります。一方、ペインクリニックは、「痛みの治療」を専門とする診療科です。坐骨神経痛を含む様々な種類の痛みに対して、より専門的かつ集中的なアプローチを行います。ペインクリニックの大きな特徴は、薬物療法に加えて、「神経ブロック注射」を積極的に用いる点です。神経ブロック注射は、痛みの原因となっている神経の周囲や、痛みの伝達路となっている神経節などに局所麻酔薬やステロイド薬を注射することで、神経の興奮を抑え、痛みを強力に軽減させる治療法です。レントゲン透視下や超音波ガイド下で行われることもあり、より正確かつ安全に注射が行われます。即効性が期待できる場合もあり、慢性的な坐骨神経痛に対しても有効なことがあります。どちらの科を受診するか迷う場合は、まず、原因を特定するための精密な画像検査を受けたい、あるいは手術も視野に入れたい場合は整形外科。原因はある程度分かっているが痛みがなかなか改善しない、より専門的な痛みの治療(特に神経ブロック注射など)を受けたいという場合はペインクリニック、という大まかな目安があります。両方の科が連携して治療にあたることもあります。