子どもの発熱と同時に発疹が現れる病気の中で、細菌感染が原因となる代表的なものに「溶連菌感染症(A群β溶血性連鎖球菌感染症)」があります。溶連菌感染症は、適切な抗菌薬(抗生物質)による治療が必要であり、放置するとリウマチ熱や急性糸球体腎炎といった重大な合併症を引き起こす可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。溶連菌感染症の主な症状は、突然の高熱(三十八度以上のことが多い)と、強い喉の痛みです。喉の奥を見ると、扁桃腺が赤く腫れ上がり、白い膿(白苔)が付着していたり、喉の粘膜に赤い点状の出血斑が見られたりします。また、舌の表面がイチゴのように赤くブツブツとした状態になる「イチゴ舌」も、溶連菌感染症に特徴的な所見の一つです。そして、これらの喉の症状とほぼ同時か、少し遅れて、皮膚に発疹が現れることがあります。この発疹は「猩紅熱様発疹(しょうこうねつようほっしん)」と呼ばれ、非常に細かく、粟粒(あわつぶ)のような赤い点状の発疹が、首や胸、脇の下、股といった皮膚の柔らかい部分から始まり、徐々に全身に広がっていきます。触るとザラザラとした紙やすりのような感触があり、かゆみを伴うこともあります。顔にも発疹が出ることがありますが、口の周りだけが白く抜けて見える「口囲蒼白(こういそうはく)」が特徴的とされることもあります。この猩紅熱様発疹は、通常、数日から一週間程度で消えていきますが、その後、手足の指先の皮膚などが薄く剥けてくる(落屑:らくせつ)ことがあります。溶連菌感染症の診断は、喉の診察所見に加え、喉の奥を綿棒でこすって行う迅速診断キットによる検査が一般的です。この検査で陽性となれば、溶連菌感染症と診断され、抗菌薬(主にペニシリン系)の内服治療が開始されます。処方された抗菌薬は、症状が改善した後も必ず指示された期間、最後まで飲み切ることが、合併症予防のためには非常に重要です。