帯状疱疹の皮膚症状(発疹や水疱)が治った後も、その部位に数ヶ月から数年、あるいは生涯にわたって痛みが残ってしまうことがあり、これを「帯状疱疹後神経痛(PHN:Postherpetic Neuralgia)」と呼びます。帯状疱疹の最もつらい合併症の一つであり、患者さんのQOL(生活の質)を著しく低下させることがあります。帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の急性期に、水痘・帯状疱疹ウイルスによって神経が強くダメージを受けることが原因で起こると考えられています。神経が損傷されると、痛みの信号が過剰に発生したり、痛みを抑制する機能が低下したりして、持続的な痛みが生じるのです。痛みは、焼けつくような、あるいは刺すような、電気が走るような、ズキズキとした持続的な痛みであることが多く、衣服が触れたり、風が当たったりするだけでも激しい痛みを感じる「アロディニア」という状態になることもあります。また、かゆみや感覚の鈍麻、逆に過敏になるといった感覚異常を伴うこともあります。帯状疱疹後神経痛に移行するリスクは、高齢者(特に60歳以上)、帯状疱疹の急性期の痛みが強かった人、皮膚症状が広範囲だった人、免疫力が低下している人などで高いと言われています。このつらい帯状疱疹後神経痛の治療は、一筋縄ではいかないことも多く、専門的なアプローチが必要となります。相談すべき診療科としては、まずペインクリニックが挙げられます。ペインクリニックの医師は、痛みの診断と治療の専門家であり、薬物療法(神経障害性疼痛治療薬、抗うつ薬、オピオイド鎮痛薬など)、神経ブロック注射(硬膜外ブロック、神経根ブロック、交感神経ブロックなど)、理学療法、心理療法などを組み合わせて、痛みのコントロールを目指します。また、神経内科も、神経系の痛みの専門家として、薬物療法の調整などを行ってくれます。皮膚科は、帯状疱疹の急性期治療から関わっており、帯状疱疹後神経痛の予防や、初期の段階での治療(リドカイン貼付剤など)を行うことがあります。帯状疱疹後神経痛は、早期に治療を開始するほど効果が高いと言われています。痛みが長引く場合は、我慢せずに専門医に相談することが大切です。
帯状疱疹後神経痛とは?長引く痛みと診療科