まぶたの腫れや痛みを引き起こす麦粒腫(ものもらい)。その直接的な原因は細菌感染ですが、実は、私たちの体の状態、特に疲労やストレスが、麦粒腫の発症に深く関わっていることがあります。なぜ疲労やストレスが麦粒腫を招くのでしょうか。それは、これらの要因が体の「免疫力」を低下させるからです。免疫力とは、外部から侵入してくる細菌やウイルスといった病原体から体を守るための防御システムです。この免疫力が正常に働いていれば、たとえ黄色ブドウ球菌などの細菌がまぶたの腺に付着したとしても、増殖を抑え込み、炎症が起こるのを防ぐことができます。しかし、過度な疲労が蓄積したり、強い精神的なストレスが長期間続いたりすると、自律神経のバランスが乱れたり、免疫細胞の働きが低下したりして、体全体の抵抗力が弱まってしまいます。免疫力が低下すると、普段なら問題にならないような少量の細菌にも感染しやすくなり、麦粒腫のような化膿性の炎症が起こりやすくなるのです。また、睡眠不足も免疫力低下の大きな原因の一つです。睡眠中には、免疫細胞の働きを活性化させたり、傷ついた細胞を修復したりするためのホルモンが分泌されます。睡眠時間が不足すると、これらの働きが十分に行われず、細菌に対する抵抗力が弱まってしまいます。さらに、栄養バランスの偏った食事や、不規則な生活習慣も、免疫機能の維持にはマイナスです。特に、ビタミンAやビタミンC、ビタミンEといった抗酸化作用のあるビタミンや、タンパク質、亜鉛などのミネラルは、免疫細胞の働きや皮膚・粘膜の健康を保つために重要です。これらの栄養素が不足すると、免疫力が低下しやすくなります。このように、麦粒腫の発症は、単に細菌が目に付着したというだけでなく、その時の体のコンディションが大きく影響しています。「最近、仕事が忙しくて疲れが溜まっているな」「大きなストレスを感じることがあったな」といった時に麦粒腫ができやすいと感じる方は、それが体からのSOSサインである可能性を考え、十分な休息と栄養を摂り、ストレスを上手に解消するよう心がけることが大切です。