指を切った際、単に皮膚が切れただけでなく、その下にある神経や腱(けん)まで損傷してしまうことがあります。もし、指を動かしにくい、感覚がおかしい、しびれが取れないといった症状があれば、神経や腱の損傷を疑い、専門的な治療を受ける必要があります。このような場合、受診すべき診療科は、主に整形外科、特に「手の外科」を専門とする医師がいる医療機関です。手の外科医は、手や指の複雑な解剖学的構造や機能に精通しており、神経や腱の損傷に対する専門的な診断と治療(手術を含む)を行います。指には、指を曲げるための屈筋腱(くっきんけん)と、指を伸ばすための伸筋腱(しんきんけん)があり、また、指の感覚を伝える神経(指神経)や、指に血液を送る血管が走行しています。深く鋭利なもので指を切った場合、これらの神経や腱、血管が一緒に損傷される可能性があります。神経が損傷されると、その神経が支配している領域の感覚が鈍くなったり(感覚鈍麻)、しびれたり、逆に触れるだけで強い痛みを感じたり(アロディニア)、あるいは指が動かしにくくなったり(運動麻痺)といった症状が現れます。腱が損傷されると、指を曲げたり伸ばしたりする動きができなくなります。例えば、屈筋腱が断裂すると指を曲げられなくなり、伸筋腱が断裂すると指を伸ばせなくなります。これらの神経や腱の損傷は、自然に治癒することは難しく、多くの場合、手術による修復が必要となります。手術では、顕微鏡などを用いて、断裂した神経や腱を丁寧に縫合します。手術後は、リハビリテーション(作業療法や理学療法)が非常に重要となり、関節が硬くなるのを防いだり、指の動きを再獲得したりするための訓練が行われます。指を切って、上記のような機能障害や感覚異常がある場合は、自己判断せずに、できるだけ早く手の外科専門医のいる整形外科を受診しましょう。早期の適切な治療とリハビリテーションが、指の機能回復のためには不可欠です。