バセドウ病と診断された場合、その治療法は、主に三つの選択肢があります。薬物療法(抗甲状腺薬)、アイソトープ(放射性ヨウ素)治療、そして手術療法です。どの治療法を選択するかは、患者さんの年齢、症状の重症度、甲状腺の大きさ、合併症の有無、そして患者さんの希望などを総合的に考慮し、医師とよく相談して決定します。まず、最も一般的に行われるのが「薬物療法」です。これは、甲状腺ホルモンの合成を抑える抗甲状腺薬(チアマゾール(メルカゾール®)やプロピルチオウラシル(プロパジール®、チウラジール®))を内服する治療法です。多くの場合、この薬物療法から治療が開始されます。薬の効果が現れるまでには数週間から数ヶ月かかり、定期的な血液検査で甲状腺ホルモン値や副作用の有無をチェックしながら、薬の量を調整していきます。治療期間は、通常数年単位と長期にわたることが多いです。主な副作用としては、かゆみや発疹、肝機能障害、そして稀ですが重篤な副作用として無顆粒球症(白血球の一種である顆粒球が極端に減少する状態)などがあります。次に、「アイソトープ(放射性ヨウ素)治療」です。これは、放射性ヨウ素を含んだカプセルを内服し、甲状腺に集まった放射性ヨウ素がβ線という放射線を出すことで、甲状腺の細胞を破壊し、甲状腺ホルモンの産生を減らす治療法です。比較的簡便で、高い治療効果が期待できますが、治療後に甲状腺機能低下症になりやすく、甲状腺ホルモン薬の補充が永続的に必要となることがあります。また、妊娠中や授乳中の女性、近い将来妊娠を希望する女性、そして18歳以下の若年者には原則として行われません。最後に、「手術療法」です。これは、甲状腺の一部または全部を切除することで、甲状腺ホルモンの産生量を減らす治療法です。甲状腺腫が非常に大きい場合や、薬物療法やアイソトープ治療で効果が得られない場合、あるいは副作用でこれらの治療が続けられない場合、早期に確実な治療効果を望む場合などに選択されます。手術後は、甲状腺機能低下症となり、甲状腺ホルモン薬の補充が必要となることが多いです。また、手術に伴う合併症(反回神経麻痺による声がれや、副甲状腺機能低下症による低カルシウム血症など)のリスクも考慮する必要があります。
バセドウ病の治療法薬物療法・アイソトープ・手術