夏の暑い日に、ムカムカとしたり、吐き気を感じたりするのは、なぜなのでしょうか。その主な原因としては、「自律神経の乱れ」と「脱水症状」が深く関わっています。まず、自律神経の乱れについてです。私たちの体は、暑い環境下では、汗をかいたり、皮膚の血管を拡張させたりして、体温を下げようとします。これらの体温調節は、自律神経(特に交感神経と副交感神経)によってコントロールされています。しかし、高温多湿な環境が長時間続いたり、あるいは冷房の効いた涼しい室内と暑い屋外との急激な温度差に繰り返しさらされたりすると、自律神経が過剰に働き、そのバランスが崩れてしまいます。自律神経は、消化器系の働きもコントロールしているため、そのバランスが乱れると、胃腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が悪くなったり、胃酸の分泌が異常になったりして、食欲不振や胃もたれ、そして吐き気といった症状が現れやすくなるのです。次に、脱水症状です。暑い時には大量の汗をかき、体内の水分だけでなく、ナトリウムやカリウムといった電解質も一緒に失われてしまいます。この水分と電解質の不足が脱水症状を引き起こし、その初期症状の一つとして吐き気やめまい、頭痛などが現れることがあります。脱水によって血液の量が減少し、脳への血流が悪くなったり、あるいは電解質のバランスが崩れて神経や筋肉の機能に影響が出たりすることが、吐き気の原因となると考えられています。また、脱水は消化液の分泌も低下させ、消化不良を招き、それが吐き気に繋がることもあります。このように、暑さによる吐き気は、自律神経の乱れと脱水症状が複合的に関与して起こることが多いのです。予防のためには、こまめな水分・塩分補給と、体を冷やしすぎない適切な温度管理、そして十分な休息が重要となります。