バセドウ病が疑われる場合、医療機関ではどのような流れで診断が行われ、どのような検査が必要になるのでしょうか。そのプロセスを理解しておくと、安心して受診できるでしょう。まず、医療機関(主に内分泌内科や甲状腺専門外来など)を受診すると、医師による詳しい問診が行われます。いつから、どのような症状(動悸、手の震え、多汗、体重減少、眼球突出、甲状腺の腫れ、イライラ感、疲労感など)があるのか、症状の程度や経過、過去の病歴や家族歴(特に甲状腺疾患の家族歴)、服用中の薬、喫煙歴などを詳しく聞かれます。この問診は、診断の手がかりを得るために非常に重要です。次に、身体診察です。医師は、甲状腺の腫れの有無や大きさ、硬さ、圧痛(押したときの痛み)などを触診で確認します。また、眼球突出や眼瞼後退(まぶたが上に引きつれる)といった眼の症状の有無、脈拍数、血圧、手の震え、皮膚の湿り具合なども観察します。これらの問診と診察から、バセドウ病の可能性が高いと判断された場合、いくつかの検査が行われます。最も重要な検査が、血液検査です。血液検査では、以下の項目を主に調べます。甲状腺ホルモン(FT3:遊離トリヨードサイロニン、FT4:遊離サイロキシン):これらの値が高いと、甲状腺機能亢進症と判断されます。甲状腺刺激ホルモン(TSH):脳の下垂体から分泌され、甲状腺ホルモンの分泌を調節するホルモンです。バセドウ病では、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるため、TSHの値は逆に低くなります(抑制されます)。TRAb(TSH受容体抗体)またはTSAb(甲状腺刺激抗体):バセドウ病の原因となる自己抗体です。これらの抗体が陽性であれば、バセドウ病の診断がより確実になります。これらの血液検査で、甲状腺ホルモンが高く、TSHが低く、TRAbまたはTSAbが陽性であれば、ほぼバセドウ病と診断されます。さらに、甲状腺の状態を詳しく調べるために、甲状腺超音波(エコー)検査が行われることがあります。甲状腺の大きさや血流の状態、腫瘍(しこり)の有無などを観察します。また、甲状腺の機能をより詳細に評価するために、甲状腺シンチグラフィ(放射性ヨウ素摂取率測定など)が行われることもあります。これは、微量の放射性ヨウ素を服用または注射し、甲状腺への取り込み具合を調べる検査です。