耳掃除は、やり方を間違えたり、やりすぎたりすると、外耳道炎や耳垢栓塞といったトラブルだけでなく、さらに深刻な「鼓膜損傷」を引き起こす危険性も潜んでいます。鼓膜は、外耳道の最も奥にある、直径約1センチ、厚さ約0.1ミリという非常に薄くてデリケートな膜です。音の振動をキャッチし、それを中耳へと伝える重要な役割を担っています。この鼓膜を、耳掃除の際に綿棒や耳かきで誤って突いてしまったり、強くこすってしまったりすると、傷ついたり、ひどい場合には穴が開いてしまったりすることがあります。これを鼓膜損傷(鼓膜穿孔)と呼びます。鼓膜を損傷すると、まず、突然の激しい耳の痛みが生じます。また、出血が見られたり、聞こえにくさ(難聴)や耳鳴り、めまいといった症状が現れたりすることもあります。特に、耳かきのように先端が硬く尖ったものを使用している場合や、耳掃除中に不意に体が動いたり、誰かにぶつかられたりした場合などに、鼓膜損傷のリスクが高まります。また、子どもに耳掃除をしてあげる際に、子どもが急に動いてしまうことで、誤って鼓膜を傷つけてしまうケースも少なくありません。もし、耳掃除中に急な痛みを感じたり、出血があったりした場合は、すぐに耳掃除を中止し、速やかに耳鼻咽喉科を受診しましょう。医師は、鼓膜の状態を顕微鏡などで詳しく観察し、損傷の程度を評価します。小さな穴であれば、自然に閉鎖することが多いですが、穴が大きい場合や、感染を起こしている場合、あるいは聞こえにくさが改善しない場合には、鼓膜を再生させるための処置や、手術(鼓膜形成術など)が必要となることもあります。鼓膜損傷を予防するためには、耳掃除の際に、綿棒や耳かきを耳の奥深くまで入れすぎないこと、そして周囲の安全を確認し、落ち着いた環境で行うことが最も重要です。特に、子どもや高齢者に耳掃除をする場合は、細心の注意を払いましょう。耳の奥の耳垢は、無理に取ろうとせず、気になる場合は耳鼻咽喉科で専門医に取ってもらうのが安全です。
鼓膜を傷つけるリスクも!耳掃除のしすぎに潜む危険