大人の喉に赤い斑点が見られ、それに加えて喉の痛みや発熱といった症状もある場合、その多くはウイルスや細菌による喉の感染症が原因と考えられます。代表的なものをいくつかご紹介します。まず、「急性咽頭炎」や「急性扁桃炎」です。これらは、風邪のウイルスやインフルエンザウイルス、アデノウイルス、あるいはA群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)といった細菌などに感染することで、喉の粘膜や扁桃腺に急性の炎症が起こる病気です。喉の奥を見ると、粘膜が赤く腫れ上がり、赤い斑点や点状出血、あるいは扁桃腺に白い膿(白苔)が付着していることがあります。症状としては、強い喉の痛み(特に飲み込む時の痛み)、三十八度以上の高熱、悪寒、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などが現れます。溶連菌感染症の場合は、舌がイチゴのように赤くブツブツになる「イチゴ舌」や、体に細かい赤い発疹(猩紅熱様発疹)が現れることもあります。次に、「伝染性単核球症(でんせんせいたんかくきゅうしょう)」も、発熱、喉の痛み、そして喉の奥の赤い斑点や扁桃腺の腫れを引き起こすことがあります。これは、主にEBウイルスというヘルペスウイルスの一種に初めて感染することで発症し、若い人に多く見られます。首のリンパ節の腫れや、肝機能障害、脾臓の腫れなどを伴うこともあります。また、「ヘルパンギーナ」や「手足口病」といった、主に夏場に子どもたちの間で流行するエンテロウイルス感染症に、大人がかかることもあります。これらの場合、喉の奥(口蓋垂の周辺や軟口蓋など)に小さな水疱や赤い発疹(口内炎)が多数でき、高熱と強い喉の痛みを伴います。その他、アデノウイルス感染症の一つである「咽頭結膜熱(プール熱)」も、高熱、強い喉の痛み、そして目の充血や目やにといった結膜炎の症状が現れます。これらの感染症は、それぞれ原因となる病原体が異なるため、適切な診断と治療が必要です。特に、溶連菌感染症の場合は、抗菌薬による治療をしっかりと行わないと、リウマチ熱や急性糸球体腎炎といった重大な合併症を引き起こす可能性があるため注意が必要です。