暑さで気分が悪くなった時、体内にこもった熱を効率よく放出し、体温を下げることが、症状の緩和と重症化の予防には不可欠です。体を効果的に冷やすための具体的な方法を知っておきましょう。まず、最も手軽で重要なのは、太い血管が皮膚の表面近くを通っている部分を重点的に冷やすことです。具体的には、首の両脇(頸動脈)、脇の下(腋窩動脈)、そして足の付け根(鼠径部、大腿動脈)の三点が基本となります。これらの部分を冷やすことで、冷やされた血液が全身を巡り、効率的に体温を下げることができます。冷やす際には、濡らしたタオルやハンカチ、氷嚢(ひょうのう)、あるいはビニール袋に氷と少量の水を入れ、タオルで包んだものなどを当てます。保冷剤も有効ですが、直接肌に当てると凍傷になる可能性があるため、必ずタオルなどで包んで使用しましょう。また、額やこめかみ、手首、足首などを冷やすのも、体感的な涼しさを得るのに役立ちます。次に、霧吹きなどで体に水を吹きかけ、うちわや扇風機、あるいは雑誌などで扇いで風を送るのも、気化熱を利用して体温を下げるのに効果的です。皮膚の表面に水分があると、それが蒸発する際に周囲の熱を奪うため、冷却効果が高まります。特に、広範囲に水をかけることができる場合は、より効果的です。衣類を緩めたり、濡らしたりするのも良いでしょう。体にフィットした服や、通気性の悪い素材の服は、熱の放散を妨げます。可能であれば、上着などを脱がせ、肌の露出面積を増やすことで、熱が逃げやすくなります。もし、意識があり、協力が得られる状態であれば、冷たいシャワーを浴びさせたり、手足を冷水につけたりすることも、急速に体温を下げる方法として有効です。ただし、高齢者や体力の低下している人の場合は、急激な温度変化が体に負担をかける可能性もあるため、状態を見ながら慎重に行う必要があります。これらの冷却方法は、あくまで応急手当であり、医療機関での治療に代わるものではありません。