心房細動は、心臓の上部にある心房が不規則かつ非常に速く興奮することで、脈が乱れる不整脈の一種です。加齢とともに発症しやすくなり、高齢化社会の進展に伴い患者数は増加傾向にあります。心房細動の主な症状には動悸、息切れ、胸部不快感などがありますが、無症状の場合も少なくありません。しかし、心房細動を放置すると、心房内に血栓(血の塊)ができやすくなり、それが脳に飛んで脳梗塞を引き起こすリスクが高まります。また、長期化すると心機能が低下し、心不全に至ることもあります。そのため、心房細動と診断されたら、適切な治療を受けることが非常に重要です。心房細動の治療法の選択肢は、大きく分けて三つの柱があります。一つ目は「脳梗塞の予防(抗凝固療法)」、二つ目は「心拍数のコントロール(レートコントロール療法)」、そして三つ目は「心房細動そのものを停止させ、正常な洞調律を維持する(リズムコントロール療法)」です。どの治療法を選択するかは、患者さんの年齢、心房細動のタイプ(発作性か持続性かなど)、症状の有無、合併している他の病気(高血圧、糖尿病、心不全、腎臓病など)、そして脳梗塞のリスク評価などを総合的に考慮し、医師と患者さんがよく相談して決定します。治療の目標は、脳梗塞などの重篤な合併症を予防し、症状を軽減し、QOL(生活の質)を向上させることです。近年、心房細動の治療法は目覚ましく進歩しており、薬物療法だけでなく、カテーテルアブレーションや外科的治療といった非薬物療法も選択肢として広がっています。まずは、心房細動という病気について正しく理解し、どのような治療の選択肢があるのかを知ることが、適切な治療への第一歩となります。