指を切ってしまったけれど、「大したことないだろう」「絆創膏を貼っておけば治るだろう」と自己判断で放置してしまうと、様々なリスクが生じる可能性があります。指の傷は、見た目以上に深かったり、細菌感染を起こしやすかったりするため、注意が必要です。まず、最も一般的なリスクは、傷口からの細菌感染です。私たちの手や、切った物には、目に見えない細菌がたくさん付着しています。傷口からこれらの細菌が侵入し、増殖すると、傷口が赤く腫れ上がり、ズキズキとした痛みや熱感を伴い、膿が出るようになります。これは、傷が化膿しているサインです。この局所的な感染が進行すると、リンパ管を通って炎症が広がる「リンパ管炎」や、リンパ節が腫れて痛む「リンパ節炎」を引き起こすことがあります。さらに重症化すると、皮膚の深い部分にまで感染が及ぶ「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」や、骨にまで感染が広がる「骨髄炎」といった深刻な状態に至る可能性もあります。これらの場合、発熱や悪寒、全身倦怠感といった全身症状が現れ、入院して点滴による抗菌薬治療や、場合によっては手術が必要になることもあります。また、指を切った傷で特に注意が必要な感染症に「破傷風」があります。破傷風菌は、土壌中などに広く存在する細菌で、錆びた金属や汚れたもので切った傷から体内に侵入し、神経を侵す毒素を産生します。初期には口が開きにくい、首筋が張るといった症状が現れ、進行すると全身の筋肉のけいれんや呼吸困難を引き起こし、命に関わることもある非常に危険な病気です。さらに、傷が深かったり、神経や腱を損傷していたりする場合、放置すると指の動きが悪くなったり(機能障害)、しびれや感覚の鈍麻が残ったり(知覚障害)、あるいは傷跡がひきつれて指が曲がりにくくなったり(瘢痕拘縮)といった後遺症を残す可能性もあります。このように、指を切った傷を放置することには、様々なリスクが伴います。傷の大小に関わらず、まずは適切に応急処置を行い、医療機関を受診して医師の指示を仰ぐことが大切です。