長引く咳が咳喘息によるものかどうかを診断するためには、専門医による診察といくつかの検査が必要となります。咳喘息の診断は、主に以下の特徴的な症状や検査結果に基づいて総合的に判断されます。まず、診断基準として最も重要なのは、「喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)を伴わない咳が3週間以上(多くは8週間以上)持続する」ことです。そして、「気管支拡張薬(気道を広げる薬)の吸入または内服が咳発作に有効である」という点が非常に重要なポイントとなります。これは、咳喘息の気道には気管支喘息と同様の可逆的な気道狭窄(薬によって広がる気道の狭まり)が存在するためです。医療機関では、まず詳細な問診が行われます。咳の性質(乾いた咳か、痰が絡むか)、咳が出る時間帯(夜間、早朝、日中など)、咳を誘発する要因(アレルゲン、運動、冷気、会話など)、アレルギー歴、家族歴、喫煙歴、最近の感染症の有無などが詳しく確認されます。次に、聴診で呼吸音に喘鳴がないことを確認します。画像検査としては、胸部X線検査(レントゲン検査)や胸部CT検査が行われることがあります。これらは、咳の原因となる他の肺疾患(肺炎、肺結核、肺がんなど)を除外するために重要です。咳喘息自体は、これらの画像検査では特徴的な異常所見を示さないことが多いです。呼吸機能検査(スパイロメトリー)も行われます。これは、肺活量や1秒間に吐き出せる空気の量(1秒量)などを測定する検査で、気道の狭窄の程度を評価します。咳喘息では、基本的な呼吸機能は正常範囲内であることが多いですが、気道過敏性検査(メサコリン吸入試験など)を行うと、気道が刺激に対して過敏に反応して狭窄しやすいことが確認できます。ただし、気道過敏性検査は実施できる施設が限られています。アレルギーの関与を調べるために、血液検査で特異的IgE抗体(特定のアレルゲンに対する抗体)を測定したり、皮膚プリックテストを行ったりすることもあります。また、喀痰検査で喀痰中の好酸球(アレルギー性炎症に関与する白血球の一種)の割合を調べることも診断の助けになります。これらの検査結果と、気管支拡張薬の効果を総合的に判断し、他の咳の原因となる疾患を除外した上で、咳喘息の診断が下されます。