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カテーテルアブレーション心房細動の根治を目指す
心房細動の治療法の中で、近年、特に進歩が著しく、根治または長期的な抑制が期待できる治療法として注目されているのが「カテーテルアブレーション治療」です。これは、薬物療法だけでは効果が不十分な場合や、副作用で薬が使えない場合、あるいはより積極的な治療を望む患者さんにとって、有力な選択肢となります。カテーテルアブレーション治療は、カテーテルと呼ばれる細い管を用いて、心房細動の原因となっている心臓内の異常な電気信号の発生源を治療する方法です。心房細動の多くは、肺静脈(肺から左心房へ血液が戻ってくる血管)の付け根あたりから発生する異常な電気的興奮が引き金となって起こると考えられています。そのため、カテーテルアブレーションでは、主にこの肺静脈と左心房の電気的な連絡を遮断する「肺静脈隔離術(はいじょうみゃくかくりじゅつ)」が行われます。具体的には、足の付け根などの太い血管からカテーテルを挿入し、レントゲン透視や三次元マッピングシステム(心臓内のカテーテルの位置を立体的に表示する装置)で確認しながら、カテーテルの先端を心臓内の目的部位まで進めます。そして、カテーテルの先端から高周波電流を流してその部分を焼灼(しょうしゃく)したり、あるいはバルーンカテーテルを用いて冷凍凝固させたりすることで、異常な電気信号が左心房全体に伝わらないようにします。これにより、心房細動の発生を抑制し、正常な洞調律を維持することを目指します。カテーテルアブレーションの成功率は、特に発作性心房細動の場合には比較的高く、一回の治療で70~80%程度の患者さんで心房細動が抑制されると言われています。持続性心房細動の場合は、成功率がやや低下したり、複数回の治療が必要になったりすることもあります。治療に伴う合併症としては、出血、心タンポナーデ(心臓の周りに血液が溜まる状態)、脳梗塞、肺静脈狭窄、食道との交通(稀だが重篤)などが報告されていますが、経験豊富な施設ではこれらのリスクを最小限に抑えるための対策が講じられています。治療後も、抗凝固薬の継続が必要な場合があるなど、個々の患者さんの状態に応じたフォローアップが重要です。