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側頭動脈炎の初期症状とこめかみ血管
こめかみの血管が浮き出て見えることに加え、ズキズキとした頭痛や圧痛がある場合、側頭動脈炎という病気の可能性を考える必要があります。側頭動脈炎は、主に頭部の比較的太い動脈、特にこめかみを通る側頭動脈に炎症が起こる血管炎の一種です。五十歳以上の高齢者、特に女性に多く発症すると言われています。この病気の初期症状は、風邪や単なる老化現象と間違われやすいものも含まれるため、注意が必要です。最も代表的な症状は、こめかみ部分を中心とした頭痛です。この頭痛は、しばしば拍動性で、持続することが多く、夜間や早朝に強まる傾向があります。また、炎症を起こしている血管の走行に沿って、こめかみ部分に硬結(しこり)を触れたり、圧痛(押すと痛む)を感じたりすることがあります。髪をとかすときや、眼鏡をかけたときに痛みを感じることで気づく場合もあります。さらに、ものを噛むときに顎の筋肉が痛んだり、だるくなったりする症状(顎跛行)も特徴的な症状の一つです。これは、顎を動かす筋肉への血流が悪くなるために起こります。全身症状として、微熱が続いたり、原因不明の体重減少、全身の倦怠感、食欲不振などが現れることもあります。そして、側頭動脈炎で最も警戒すべき合併症は、眼動脈への炎症の波及による視力障害です。急に視力が低下したり、ものが二重に見えたり、最悪の場合は失明に至ることもあります。そのため、これらの症状に気づいたら、できるだけ早く専門医の診察を受けることが極めて重要です。こめかみの血管が浮き出て見えるというサインは、側頭動脈炎の一つの所見である可能性があり、特に上記のような症状を伴う場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。早期発見と適切な治療(主にステロイド治療)により、視力障害などの深刻な合併症を防ぐことが期待できます。