坐骨神経痛と診断された場合、その治療は、原因や症状の程度、患者さんの状態などを総合的に考慮して決定されます。主な治療法としては、保存的治療(薬物療法、理学療法、神経ブロック注射など)と、場合によっては手術療法があります。まず、保存的治療の中心となるのが「薬物療法」です。痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:ロキソプロフェンやジクロフェナクなど)やアセトアミノフェンといった鎮痛薬が用いられます。筋肉の緊張が強い場合には、筋弛緩薬が併用されることもあります。しびれや神経の痛み(神経障害性疼痛)に対しては、神経の興奮を抑える作用のある抗てんかん薬(プレガバリンやガバペンチン、ミロガバリンなど)や、痛みの伝達に関わる神経伝達物質のバランスを調整する抗うつ薬(三環系抗うつ薬やSNRIなど)が処方されることがあります。また、血流を改善する目的でプロスタグランジン製剤が用いられることもあります。「理学療法」も重要な治療法の一つです。温熱療法や電気刺激療法、マッサージなどで痛みを和らげたり、筋肉の緊張をほぐしたりします。また、運動療法として、ストレッチや体幹トレーニング、姿勢改善指導などが行われ、腰椎への負担を軽減し、再発を予防します。「神経ブロック注射」は、痛みが強い場合や、薬物療法で十分な効果が得られない場合に検討されます。これは、痛みの原因となっている神経の周囲や、炎症を起こしている部位に、局所麻酔薬やステロイド薬を注射することで、神経の興奮を直接抑え、痛みを強力に軽減させる治療法です。レントゲン透視下や超音波ガイド下で行われることもあります。これらの保存的治療を数ヶ月程度行っても症状が改善しない場合や、麻痺が進行する場合、あるいは排尿や排便の障害(膀胱直腸障害)が現れた場合には、「手術療法」が検討されます。手術は、原因となっている病気(例えば、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など)に対して、神経の圧迫を取り除くことを目的として行われます。代表的な手術には、ヘルニア摘出術や脊柱管拡大術などがあります。
坐骨神経痛の治療法薬物療法から手術まで